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開発者インタビュー
若い世代に挑戦の精神を高めてもらう場所を目指している

SHIRAI ARCHITECTS代表 白井純平

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略歴

1985年生まれ。​群馬県高崎市出身。都内で建築設計を学び、株式会社日本設計にて海外案件を担当し、10か国の案件に携わる。2017年に独立し、高崎市に事務所を構える。「独立するなら群馬県」といわれるようになることを目指し、Colleを企画・設計をした。

なぜColleを作ろうと思ったのですか?

SHIRAI ARCHITECTSでは独立開業をされたい店舗デザインの相談がよくきます。相談を受ける中で感じていたのは、「いきなり店を持つこと」のハードルの高さでした。
飲食店でも物販店でも、物件を借りて、内装工事をして、設備を入れて、毎月の固定費を払いながら営業する。もちろん本気で挑戦するからこそ覚悟は必要ですが、物価高騰が話題に上がる今の時代、その最初の一歩が重すぎるとも感じていました。

一方で、SNSを見ると、感度の高い個人や小さなECブランドがたくさん存在しています。ただ、その人たちが実際に「リアルな場」でお客様と接点を持つ機会は意外と少ない。コーヒーフェアやポップアップの企画や販売許可のとれる場所がないと、実際に商品を手に取ってもらう経験や、自分のサービスが地域で受け入れられる感覚を得る機会は限られています。

Colleは、その間をつなぐ場所として考えました。しかも、あえて住宅街につくっています。駅前や観光地ではなく、日常の中にある場所です。特別な集客力がない環境だからこそ、その事業や商品そのものの力が見えやすい。近隣の方に自然に受け入れられるかどうかも含めて、小さく実験できる場所にしたかったんです。単なるレンタルスペースではなく、「挑戦を実際の商いに近づける場所」を目指しています。

​こうして集まった事業者の挑戦はColleにとどまらず、地域や周辺の事業者等と関係を生み出すきっかけになり、大きな視点で考えると「まちづくり」にも発展して地域活性になるとも考えています。

​Colleの展開ダイアグラム。小さな事業の集まりは大きな可能性をもつ。

駅前ではなく住宅街だと集客性の不安があるかと思いますが?

もちろん、その不安はあると思います。
実際、一般的に考えれば、駅前や人通りの多い場所の方が商売には有利です。自然に人が流れてきますし、「立地の力」を借りることができます。ただ、Colleでは逆に、その環境に意味があると考えています。

 

例えば、駅前でうまくいった場合、それが「商品やサービスが良かったから」なのか、「単純に人通りが多かったから」なのか、判断が難しいことがあります。もちろん駅前立地には大きな価値がありますが、Colleではもう少し“事業そのもの”を見たいと思いました。

小規模ビジネスから始まる店舗にはその事業効果を見極める必要があります。バーのマスターのように俗人性が高いビジネスだと2号店出店が難しくなり、地域性に頼らざるをえないことが多々あります。住宅街に訪れる流入客は、目的を持って来てもらう必要があります。つまり、「わざわざ行きたい理由」が必要になる。これは難しさでもありますが、小さなブランドや個人事業にとっては、実はとても重要な感覚だと思っています。

一方、住宅街だからこそ、近隣住民との距離が近い。地方ビジネスの生存のカギは、有名になり集客を一気に獲得するトレンド的なビジネスではなく、長く地域に理解され運営できることだと思います。どんな風に地域のお客様が来るのか、どう地域に受け入れられるのか、リアルな反応が見えやすい環境でテストをすることはとても重要です。商業施設や観光地では成立するけれど、日常の中では続かない業態というのも実際にはあります。

Colleでは、「人通りがあるから売れる」ではなく、「誰かにまた来たいと思ってもらえるか」を試せる場所にしたいと思っています。それは遠回りに見えて、長く続く事業には必要なプロセスだと考えています。

曜日貸しという形式にした理由は?

Colleでは、最初から「毎日営業する前提」の場所にはしたくありませんでした。というのも、独立開業の初期段階では、いきなり固定費を背負いすぎることで、事業そのものを冷静に育てられなくなるケースが多いからです。飲食店でも物販でも、本来はまず「自分の商品やサービスが、どんな人に求められるのか」を見極める時間が必要です。でも実際には、家賃や人件費、営業日数を維持することが目的化してしまい“続けるための営業”になってしまうことが少なくありません。

曜日貸しにしたのは、小さく始められる環境をつくりたかったからです。

例えば、週に1回だけ営業してみる。その1日をどう告知するか、誰に来てもらいたいのか、どんな商品構成にするのかを考える。そういう密度の高い試行錯誤は、実は独立前にとても重要だと思っています。

 

また、曜日ごとに異なる事業者が入ることで、場所自体にも変化が生まれます。来るたびに違う店や人と出会えることで、近隣の方にとっても、日常の中のちょっとした楽しみになる。単一の店舗ではなく、小さな挑戦が集まる場所として育っていけばいいなと思っています。

曜日貸しは、用意した施設の資産を利用者みんなでシェアして、挑戦リスクを低減させる効果もあります。しかし主な理由は単なる低コスト化の仕組みではなく、「挑戦の解像度を高めるための挑戦しやすい形式」に価値があるのだと考えています。Colleは公式LINEを運用し、事業の参考になる事例やインタビュー、イベントのフィードバックや融資制度の情報発信などを行います。勉強会やセミナーなどを開催し、小規模事業者のコミュニティハブとなるようにシステムを組んでいます。

Colleは事業者に向けて広く情報を発信していくことで、独立開業や副業による開業を支援していく

ColleのSNSの役割と、客の情報収集から事業の発展への流れ

どんな人に使ってほしいですか?

Colleは、完成目前の事業をテストマーケティングするだけの場所ではありません。むしろ、「やってみたい気持ちはあるけれど、まだ自分の店を持つには不安がある」という人に使ってほしいと思っています。

 

例えば、ずっと趣味で焼いていたお菓子を誰かに販売してみたい人。
オンラインで商品を販売しているけれど、実際に対面で反応を見てみたい人。
いつか独立したいと思いながら、何から始めればいいか分からない人。

Colleは、そういう“まだ途中にいる人”のための場所でもあります。

 

一方で、すでに店舗を持っている事業者にも価値があると思っています。
住宅街という普段とは違うエリアで営業してみることで、新しい顧客層に出会えたり、自分たちのブランドがどんな地域で受け入れられるのかを確認できる。既存店の支店を出すほどではないけれど、小さく実験したいという人にも向いています。

 

ただ、共通して大事だと思っているのは、「ちゃんと届けたい」という意思があることです。人通りが多い場所ではないからこそ、なんとなく営業していても成立しません。誰に来てほしいのか、なぜこの商品をつくっているのか、自分で考えながら発信する必要があります。Colleは、そういう小さな試行錯誤を前向きに楽しめる人と相性の良い場所だと思っています。

Collenoueという2階の住宅はどういう住まいですか?

Collenoueという名前には、「Colleの上」という言葉をローマ字表記をしているだけです(笑)。文字通り、1階で行われている小さな挑戦や、人の活動、その空気感の上に暮らす住まいです。

一般的な賃貸住宅は、できるだけ他者と関わらず、個別に完結することが前提になっています。もちろんそれも快適さのひとつですが、Collenoueでは、もう少し緩やかに人や地域との接点を持てる暮らし方を考えました。

 

1階のColleでは、曜日ごとに違う店が開かれ、地域の人が集まり、小さな商いが生まれています。その上に住むことで、ただ“借りて住む”だけではなく、街の変化や誰かの挑戦を身近に感じながら暮らすことができます。

これは、単なる上下階の関係ではありません。例えば、1階を利用している人と2階の住人が顔見知りになる。近隣住民と出店者が自然に会話する。住宅と商業が分断されず、小さく重なり合うことで、新しい地域との関わり方が生まれていく。Collenoueは、そういう関係性も含めて計画しています。

また、運営会社としても、単に家賃収入と利用料収入を分けて考えるのではなく、居住と挑戦環境が共存することで、建物全体の価値を循環させたいと考えています。2階に住むことで間接的に1階の事業挑戦者を応援している。そういった施設維持管理のキャッシュフローから、上下階の共同体としての一体感を生めたらと考えています。

 

デザインされた居住空間があり、1階には事業の挑戦環境がある。そこに人が集まり、顔見知りになり、地域との接点が生まれる。その積み重ねによって、利益だけではない“場所の価値”が育っていく。どこか新しくも、実は地域としてはずいぶん昔から存在している自然な関係なのだと思います。

Collenoueの1階店舗との「ちょうどいい距離感」の構図

Collenoueが生み出すColleの利用者との新しい接点

建築学生もプロジェクトに関わっていると聞いたのですが?

Colleは、事業者の挑戦の場であると同時に、若い建築人材の実践の場でもあるべきだとも考えていました。建築学科では、図面やデザイン、模型制作など、多くのことを学びます。ただ実際の建築や空間づくりは、それだけでは成立しません。

例えば、

  • 限られた予算の中で何を優先するか

  • 地域にどう受け入れられるか

  • 小さな事業がどう運営されるか

  • SNSや発信と空間がどう結びつくか

  • “おしゃれ”だけではなく、利益や継続性をどう考えるか

 

こうした現実的な視点は、実際の場の中でしか学べない部分が大きいと思っています。Colleでは、建築学生にも実務協力という形で関わってもらっています。図面を描くだけではなく、現場で考え、人と話し、地域を観察しながら、「空間がどう使われるのか」を体験してもらうためです。

 

特にColleは、小さな商いと日常生活が近い場所です。だからこそ、建築が単なる“作品”ではなく、人の活動や地域との関係の中で成り立っていることを、リアルに感じやすい。

また、運営側としても、若い世代の視点が入ることで、この場所自体が少しずつ更新されていく感覚があります。完成された施設を維持するというより、関わる人たちと一緒に育っていく場所にしたい。その意味でも、建築学生の参加は、Colleにとって大切な要素のひとつだと思っています。

設計した会社の日常風景

​SHIRAI ARCHITECTSでは年に数回に学生との交流会を開催し,​理論と実践の学びを深まる機会を提供している

将来的に、この場所をどう育てたいですか?

最終的には、「Colleで挑戦していた」という経験自体が、ひとつの信頼になる場所にしたいと思っています。独立開業では、金融機関や不動産オーナー、取引先など、さまざまな相手から“この人は本当に事業を続けられるのか”を見られます。ただ、創業前の段階では、それを証明する実績がまだ少ない。そこに大きな難しさがあります。

Colleでは、その前段階の“小さな実践経験”を積める環境をつくりたいと思っています。

例えば、週1回でも営業を継続する。
SNSで集客する。
住宅街の中でリピーターをつくる。
商品を改善する。
地域の人に認知される。

そういう積み重ねは、実際にはかなり事業の本質に近い経験です。

 

特に地方都市では、「駅前だから売れる」だけでは長く続きません。ブランド力、商品力、リピート性、地域との関係性、SNS発信などを、自分自身で組み立てる必要があります。Colleでは、その基本的な事業戦略を、小さく実践しながら学べるようにしたいと考えています。そして将来的には、「Colleで実績を積んだ人」が、次の独立出店へ進んでいく流れをつくりたい。

 

例えば金融機関に対しても、

  • 継続的な営業実績

  • 小規模でも利益を出した経験

  • リピーター獲得実績

  • SNS発信や地域認知の積み重ね

などが、事業の信頼性として見えてくる。

つまりColleは、単なるレンタルスペースではなく、“独立前の実践環境”として機能していくべきだと思っています。小さな挑戦を、ただの夢で終わらせず、次の独立へつながる現実的な経験に変えていく。そういう循環が生まれる場所に育っていけば嬉しいですね。

Colleが信頼の場所として成長したときの効果をイメージした図

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