
設計者ロングインタビュー
Colleはまちづくりの起点となっていく
前橋工科大学3年生(2026.3当時) 山川 倫央
略歴
山梨県出身。高校で出会った本から建築の意匠設計に興味を持ち、前橋工科大学へ進学。進学後は設計力向上に注力し、実務経験ができる場所を求め、2025年6月からSHIRAI ARCHITECTSにてアルバイトを始める。ポップアップストアや駄菓子屋などの案件に携わる中、Colleの設計を初期段階から担当する。
Colleの計画に参加したきっかけを教えてください
SHIRAI ARCHITECTSにアルバイトをしており、ほぼ初期の段階からの関わらせていただきました。なかなかこのような機会に恵まれることはないと思います。まちづくりや地域住民とのコミュニティ形成について興味があったため、独立開業したい人向けの事業をすること、住宅街の敷地で地域住民の方々の生活環境向上を考えて設計することを聞いた時に、この案件は「自分がやるんだ」「最後まで絶対にやり切ろう」と意気込みました。
この案件はアルバイトを始めて最初の案件でもあり、担当者として図面作成やアイデアなどを退社してからも日々考えることが多かったと思います。大学で学ぶことができないことも実務経験の中では沢山あり、大きく成長できたと実感しています。
Colleという場所を、最初にどのように感じましたか?
開業したい人のテストマーケティングの場であるとともに、「利用者及び地域住民のコミュニティ形成を促す場」でもあると感じました。
・住宅街に位置すること。
・曜日ごとに出店するお店が変わること。
これは開業したい人側からすれば、テストマーケティングやコスト面でみると小さい環境からスタートできるため取っ掛かりやすい環境だと思います。裏を返せば、一人で「挑戦のリスク」を負うのではなく、同じ志をもつ「同志」で負担しあう利用者間の関係は自然とコミュニティ形成につながるのではないかと思います。
また、Colleを利用する顧客側から考えたところ、「住宅街」という立地条件により地域の方たちの生活の一部になりやすいと思いました。曜日ごとにお店も変われば、これまでの「日常の中に非日常の刺激を感じられ」、周辺の暮らしに新たな楽しさが加わり、地域の話題にもなると考えられます。その先に地域住民の方々がコミュニケーションをとるようにColleという場を利用されれば、次第に周辺の他の場所でもこれまで無かった交流が生まれるのではないかと感じました。

山川の作業風景
Colleを通じて事業者にどのような機会が得られるとよいと思いますか?
「使われ方を考えること」が大切だと感じています。事業者はリアルの反応を見ながら、地域の方々が何を求めて来ているのか、どんな属性の人が来るのか、事業として受け入れられるためには何が必要か考え、自身のサービスを形成していく必要があります。
Colleから卒業し、独立開業や新たな事業展開により成長していくうえで、大切な思考プロセスだと感じています。実際には開業する場所の地域性などを考えながら運営をする必要があるため、Colleでうまくいったこと、うまくいかなかったことの原因 を考えることは、自身の事業を長く愛されるものにしていく上で重要だと思います。
学校での学びとの違いはありましたか?実際に現場に関わってみて、印象的だったことはありますか?
図面作成の学びは大きく違うと感じています。大学の図面作成の授業では、設計作法を学び、通り芯や線の濃淡などを学びます。設計課題では自分一人で図面書き、模型を作成する中で自由に考えるため、工事をする方々に対する意識がさほどありませんでした。
しかし、Colleの工事では実際に私が作った図面を見ながら職人の皆さんが壁を作り、建具を入れ、空間を作り出しています。工事をする人たちがどこを見て作るのか、どの情報が欲しいのか、施工のずれを意図的に設計の中で調整し、現場でどのように収めるのか意識しながら図面を書くと図面が読みやすくなります。大学教育と実務での図面は大きく違うのだと感じました。
現場でしか体験することができないものが多く、大学で学んだことと合わせて、これからの図面作成に活かしたいと思います。
印象的だったのは1階のキッチンです。レイアウトを任せてもらえました。まずはシェアキッチンの事例をいくつか調べ、レイアウトやどんな設備があるのかを調べました。その中でColleの利用者が必要となるものを挙げていき、配管が通る位置などに注意しながら、レイアウトを提案しました。それが実際に図面になり、発注して配置されることは印象的でした。
また、外壁やカフェの内装に関しても話し合いをしながらどのような空間にしたいか、使われ方かをイメージしながらそれに合うような色味を探して決定しました。色のサンプルを現場にもっていき、どれがいいかを考え決めていく過程も大学の設計にはない経験ができたため、印象に残っています。

塗装サンプルを並べて色を決める山川
建築学生として振り返ってみて、Colleはどんな経験になりましたか?
現実的な視点を意識的に持つようになりました。大学では学べないことを多く学ぶことができたと感じています。特に、図面を書くだけでなく、現場を見て、地域性について考え、空間がどのように使われるのかをイメージすることは、実践でしか体験することができないものです。
予算や土地条件など、多くの制限がある中で自身のアイデアをどう表現するのか、事業者側の目線に立ってどのようにすれば集 客性を高められるのかを考える過程は、Colleの設計担当をしなければ意識できなかったと感じています。
実際の工事や現場を経験して、建築に対する考え方は変わりましたか?
実際の工事や現場でしか起こらないことを通して、建築に対する考え方は大きく変わったと思います。大学での設計の授業では新しいものを1から作り出すことが多く、敷地の環境から感じた問題を解決するためにアイデアを出しながら設計しています。しかし、Colleでは設計する建物はすでにあるため0から1から作るのではなく、リノベーションという設計技法をとります。つまり限られた条件の中でアイデアを形にしていく必要があるのです。今ある形からどのようにデザインすれば現状を生かせるか、求められる空間はどういった価値を獲得しなおすものになるかなど、様々な制約の中で多角的に考えながら設計をしていく必要があります。
また、アイデアを図化しても、実際に作れるのかという問題もあります。そういった問題が現場で生じたとき、どのように対処するか即座に考える必要があります。これは大学の設計課題では起こらないものです。図面化し、模型にすることができれば提出に至れる設計課題とのギャップを感じました。空間を実現するための設計という考えが獲得でき、Colleの設計経験を得る前と後では建築への向かい方が変わったといえます。
Colleは今後どんな場所になっていくと思いますか?
Colleは独立を目指している事業者への応援とともに、事業者同士のコミュニティ形成や来客者同士のコミュニケーションの場になっていくと思います。曜日別で異なる事業者が入ることで、日によって楽しみ方が変わるのではないでしょうか。日々の中で変化があれば、生活にも抑揚が生まれると思います。それが地域の方たちに広がっていけばColleを中心としたコミュニティが形作られていくと私は思っています。
コミュニティ形成が促され、複数のコミュニティが関わっていくことで大きな輪となり、小さな事業でも多くの人とつながることで唯一無二のものになっていくと思っています。Colleはそれを促す場となり、まちづくりの起点になると思っています。
